戦国武将・明智光秀が築いた福知山城で、アートイベント「福知山イル未来と 2023」が11月12日までの土日祝日の午後5時から8時まで開かれています。今年のテーマは「夜をあそぶ」。京都府在住のアーティストが光や音を使い、趣向を凝らした仕掛けで夜の城内を彩っています。初日の10月28日に訪ねてきました。
城の入り口では、福知山公立大の学生らが製作したあんどんを貸し出し、来城者が手にとっていました。天守閣へと向かう登城坂には高さ3メートルの竹灯籠30個が並び、赤、緑、青など5色の光で照らしています。灯籠には大小の穴が彫られていました。城壁をイメージし、「つながる」との思いを込めた一筆書きのデザインだそうです。プロジェクターで明智家の家紋キキョウを路面に映し出す仕掛けもあり、遊び心を感じました。
本丸広場には高さ40センチの竹灯籠約50個が置かれています。「星灯り」と「華灯り」の2種類があり、光が直線的に広がったり、花模様を映したりする工夫が施されています。竹の骨組みを薄い繊維で覆った5個の半球イルミネーションもあり、子どもたちが〝光の海〟を走り回っていました。
竹灯籠と半球イルミネーションは、福知山市で竹を使った照明などを製作しているグループ「竹一族の陰謀」の作品です。代表の小川はじめさん(53)は「府北部の放置竹林の竹を素材にしています。身近な環境にも思いをはせてほしい」と話してくれました。
天守閣の北側に通じる石段を下りると、城壁に巨大な影が見えてきました。高さは4メートルほどもあり、迫力に驚きました。地面には流木で形づくられた架空の生物が5体置かれ、光を当てて影絵のように映していました。舞鶴市で流木アートを制作している上林比東三さん(71)の作品で、子どもたちが自分の影を映して遊んでいました。
城内ではどこからともなく、優しい音楽が聞こえてきます。京都市のフランス人サウンドアーティストで、伝統工芸品のおりんの音色を生かした音楽を創作するサミュエル・アンドレさん(45)は、イベントのため海や山をイメージした複数の楽曲を制作されました。それら複数の楽曲が16個のスピーカーから同時に流れ、文字通り風が奏でるおりんや箏の音色が加わり、その場でしか体験できない没入型のサウンド空間を作り出していました。サミュエルさんは「時間と場所で異なる曲を聞いて、想像を膨らませてもらえたら」と語ってくれました。
日常と違った『ハレの日』の福知山城を楽しめるイベントでした。城内に足を踏み入れると、あなたも魅力を発見できるかもしれません。